東京日記抄(その1)

9.15(土)いざ東京へ
朝出る。車中、江藤淳の文庫本。午後十二時半(ママ)ころ東京着。

9.16(日)銀座行き
銀ブラ。あるいは銀座ゴー。
自宅より持参の池田彌三郎『銀座十二章』(朝日文庫)がお供本。伊東屋でちょっとした買物。午後帰る。
妹宅から歩いて行ける距離に、ブックオフが三、四軒あることを知り、軽いカルチャー・ショックをうける。まず、いちばん近いK店から攻めてみることにする。
『語りの海 吉本隆明(1) 幻想としての国家』(中公文庫)105円を買う。

9.17(月)両国行き
午前、両国の江戸東京博物館へ。あれこれ興味深く見ているうちに一時間半ほど経っていておおいに焦る。浅草のマルベル堂でブロマイド漁る。
また、某人に葵丸進の大海老天丼をおごってもらう。すこぶる美味。
夜、書きものにゆきづまり、ブックオフM店へ。桃井かおり『ひとり身ポッチ』(角川文庫)、西郷信綱源氏物語を読むために』(朝日文庫)各105円、松崎天民『銀座』(ちくま学芸文庫)250円。またブックオフH店にまで足をのばし、柏原兵三『長い道』(中公文庫)、小西政継『グランドジョラス北壁』(中公文庫)各105円。
松崎天民の『銀座』に、「鳳文館」についての興味深い記述あり。ただし既読感覚ゆ。たしか魯庵の文章に見えた気がするが思い出せず。また『銀座十二章』と若干齟齬する記述あり、たしかめる必要感ず。

9.18(火)両国散歩
書きものにゆきづまり、両国さんぽ。吉良邸址見る。文学碑いくつか見る。旭天鵬関や高見山を間近で見る。某ちゃんが「お相撲さんはいい匂いがする」と云っていたのはこのことか。成程。
最近、毎晩悪夢(狭いところに閉じ込められたり殺されかけたり)にうなされるのは、寝床で榊原晃三訳のトポール『幻の下宿人』(河出文庫)を読み継いでいるせいか(この日読了)。<河岸は灰色にかすみ、セーヌ河は汚れていた。古本屋の屋台がごみ箱みたいに胸くそ悪く見えた。インテリのくず屋たちが、平気な顔をしてごみ箱をあさり、僅かな心の糧を捜していた。いざ、目的のものを捜し当てると、彼らはその顔に塗りたくられている野獣のように貪欲な表情で、互いに獲物を奪い合った。>(pp.184-85)という描写にドキリ。
その2につづく。