ジョーイカタツ? ゲダツ?

 貴乃花親方の当選を受けて、「上意下達の角界に風穴を」「上意下達という角界に反撥」などといった表現が、さっそく紙面を賑わせている。
 これを書かれた記者の方々は、「上意下達」をどう読まれているのだろうか、とふと気になった。
 国語辞典にはまだあまり目を通していないので、何ともいえない。しかし、最近の『岩波国語辞典』第七版、『三省堂国語辞典』第六版でさえ、「(じょうい)かたつ」という読みしか挙げていないので(もちろん、「げだつ」を不可としている、とはかならずしも断言できないのだけれども)、その殆どが「じょういかたつ」しか認めていないのではないかとおもう。
 また、漢字の雑学本や言葉の作法に関する本には、「げだつ」を不可とするものが多い。たとえば、水野靖夫『「漢字の力」の鍛えかた』(三笠書房知的生きかた文庫、p.191)や、「カタツをゲダツと読んでも「解脱(迷いから解放されること)」できません。」(金武伸弥『あってる!?間違ってる!?漢字の疑問』講談社+α文庫、pp.176-77)という記述など。そのほか、『NHKことばのハンドブック』(NHK出版)は、最新の第2版でも「ジョウイゲダツ」を不可としている(p.103)。
 しかしおもしろいことに、最近の「四字熟語辞典」の類では、「じょういかたつ」以外の読みを認めているのである。たとえば、「「下達」は「げたつ」(ママ)とも読む」(『漢検四字熟語辞典』)、「「下達」は「げだつ」とも読む」(『新明解四字熟語辞典』)など。
 文化庁の『言葉に関する問答集【総集編】』は、「国語辞典や漢和辞典などではすべて「カタツ」と読んで」いると述べ、「かつての軍隊ではこれ(下達―引用者)を『かたつ』と読んでいた」こと(p.389)などを根拠として、「『ジョウイカタツ』と読むのがよい」、と結論している(p.390)*1
 ところで、「『上意下達』の読み方」という文章が、石山茂利夫『日本語矯めつ眇めつ』(徳間書店1990)に収めてある(pp.108-113)。そこで石山氏は、「いまや、『げだつ』派が圧倒的多数を占めている。もっとも、ここで数の論理を振りかざし、『げだつ』でいいと言うつもりは毛頭ない。」(p.111)と述べながらも、国語辞典の不親切に苦言を呈している。
 なお、この文章を書かれるきっかけとなった記事が、読売新聞社会部『東京ことば』(読売新聞社1988)に収められている。そこには、

斎賀(秀夫―引用者)さんは、この(上意下達の―引用者)読み方の揺れについて、「『上中下』とか『上下』といった読み方に引かれて誤った読みになったのでしょう。間違いが多いのは話し言葉にはあまり使われず、間違いに気づいて直す機会が少ないこともある」と話している。(p.70)

とある。

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 結果だけをみると、うまく「乗せられた」感じもしないではないのだが、貴乃花親方が当選して、やや興奮気味である。現役時代にそこまで贔屓にしていたわけでもないのだが(贔屓は、小学生のころは千代の富士=現九重親方=、それ以降は貴闘力=現大嶽親方*2=)、ちょっと応援していた。
 そこで、おもい出していたのがテレ朝系の「大相撲ダイジェスト」。アナウンサーと解説者は日がわりなのだが、飯村真一アナと、三保ヶ関昇秋さん(もと大関増井山)が揃うと、どうしても「ダウンタウン」に見えてしまうのがおかしく、しかしいま考えてみると、そんな見方しか出来なかったことが実にもったいない。
 とはいえ最近は、中入り後の星取表しか見なくなってしまったし、初場所も、テレビで観戦したのは、中日と魁皇が勝ち越しを決めた十四日目だけ。春場所で三人が新十両昇進を決めたというのも、だいぶ後になってから知った。

*1:新装版が出たが、中身は変わっていないとおもう。

*2:一門を離脱(事実上の破門)した際にテレビに映った。