宗教は偶像を要求する。それは人間の弱点である。的確に物を掴まなければ、大方の人は安心しない。
仏像、聖画、讃美歌、祈祷、ことごとくある意味の偶像なのである。
そうしてほとんど例外なしに、教祖その人は偶像なのである。
教祖に対する信者の情緒は、ほとんど恋愛と云ってもよい。
そうして恋愛は性慾なのである。
だから非常に力強い。
だから平気で殉教する。
殉教は彼らには快楽なのである。

国枝史郎神州纐纈城』(1926)より*1

*1:引用に、拡張新字体しか使えないのが残念です。