雑駁な事がら

  • 小沼丹の全集(全四巻)を出したから、小沼丹風光る丘』が刊行されています。「作品集・全集に未収録の幻の長篇、四十年ぶりの復刊」などと書かれると、読みたくてたまらなくなります。しかし、新刊ではちょっと買えそうにない(無理をすれば買えないこともないけれど)。
  • このところ、ことばや語源に関する辞典が何冊か刊行されています。小内一『日本語表現大辞典 比喩と類語三万三八〇〇』(講談社もそのひとつ。店頭でパラパラと見ただけですが、ことばの表現例を文学作品から拾っていくというもの。帯に、飯田朝子さんと永六輔さんの推薦のことば。ところで、小内一さん。どこかで聞いたような名前だとおもっていたら、『究極版逆引き頭引き日本語辞典』の編者か。また、『日本経済新聞』(2005.3.20付)の「活字の海で」が、前田富祺監修『日本語源大辞典』(小学館と、今月下旬(二十三日?)に刊行される杉本つとむ『語源海』(東京書籍)の特徴を比較しています。前者は、刊行から数日で増刷が決まったとの由。
  • おなじく日経の書評が、はやくも小谷野敦『恋愛の昭和史』(文藝春秋を取上げています。佐野眞一さんによる、本田靖春『我、拗ね者として生涯を閉ず』(講談社の書評もありました。佐野氏いわく、「日本の言論は瀕死の状況にある。大メディアは言論機関の矜持を忘れて泥仕合に走り、期待されたフリーライターはメディアに躍らされて志を失った。本田氏はそう遺言し、残された者を粛然とさせて世を去った」。私はまだ、「先祖は『食いつめ者』」を読んでいるところ。
  • 今月出た江戸川乱歩『ふしぎな人』(光文社文庫は、「かいじん二十めんそう」*1という作品を収録しています。同作品は、この文庫版全集にはじめて収録された、いわば「レアもの」です。現在刊行途中の全集は、マニアの方(であれば当然買っているか)はもちろん、乱歩作品にはじめてふれるという方にも、私のように「つまみ食い」をしている方にもおすすめです。たとえば『屋根裏の散歩者』では、初出から八十年間(!)脱落していた一行を復活させるなど*2、綿密な校訂をおこなっており、信頼できます。

*1:『たのしい二年生』に連載されたほう。『たのしい一年生』に連載された同名作品は、鮎川哲也監修・芦辺拓編『少年探偵王』(光文社文庫)に収めてあります。

*2:讀賣新聞(夕刊)』(2004.7.16付)の「文化」欄(新保博久)参照。