「漢字的」

曇り時々晴れ。「桜の通り抜け」がはじまりました。
昼過ぎから夕方まで研究室。帰途F書店で、多川精一『焼跡のグラフィズム』(平凡社新書)を購いました。「あとがき」によれば「(グラフィズム?)三部作」の二作めなのだそうですが、第一作の『戦争のグラフィズム』(平凡社ライブラリー)は未読。
さて、『國文學』(學燈社)の最新号が、「日本語の最前線」という特集を組んでいます。今日はこのなかに収められた文章を読んだり、その他の論文を読んだりしましたが、明日か明後日にまとめて書くことにします。
円満字二郎『大人のための漢字力養成講座』(KKベストセラーズベスト新書)読了。円満字氏は、漢和辞典編集者。昨年末、『新・漢語林』が草冠を四画のものから三画のものに変えたという内容の記事に登場したので、その名を目にされた方も多いはず。『本の雑誌』四月号にも取上げられていました。引用は全然正確ではありませんが、「円満字」というのは嘘のようだが本当の苗字だ、まるで「天職」を得たかのようだ、と書かれていました*1
ところで、「大人のための」を冠した漢字の本といえば、高坂登『大人のための漢字練習帳』(アスキー)というものがあります。これはむろん、大野晋『日本語練習帳』(岩波新書)のタイトルに倣った「雨後の筍」本*2なのですが、そんなに俗悪なツクリにはなっていません。存在しないはずの文字、いわゆる「幽霊文字」なども取上げています。
円満字氏のこの本もなかなか面白く読みました。第一章〜第三章は漢字の読み*3、第四章は熟語の構造、第五章は字源、第六章は部首、第七章は字形―という構成になっています。漢字を読み書きするさいに、知っておくと役に立つ99のヒントを伝授するという内容。
巻末(カバーにもあり)のプロフィールが、またおもしろい。

テレビを見ればテロップの漢字が気になり、街を歩けば看板の漢字に注意を奪われるなど、世の中のありとあらゆる現象を漢字を中心に見てしまうという、妙な職業病に悩まされつつも、日本人と漢字の関係について、日々、思考をめぐらしている。

*1:その後、円満字氏は『週刊読書人』(四月十五日号)にも登場しました。漢字の世界の「仕組み」を知るおもしろさを語っておられます。

*2:私の本棚には、後藤寿一『ことわざ練習帳』(青谷舎)というものもあります。「ことわざ」だけを取上げるのではなくて、「とんでもございません」の誤りを指摘したり、「少年よ大志を抱け」はクラークの言葉ではない、と書いたりしています。おもえば、一九九四年頃から二〇〇〇年頃までは、漢字検定学習の意味もかねて、漢字や日本語の実用書・雑学本をやたらと買っていたのでした。本棚の二列目にはそんな類の本が隠れています。

*3:ちなみに円満字氏は、「じゅっかい」(十回)や「こしつ」(固執)という読みを認めるという立場をとっています。