重箱の隅―漢字の話題

言葉を歩く―漢字・日本語・固有名詞

言葉を歩く―漢字・日本語・固有名詞

 p.13に、いきなり「群馬県の八ツダム」という誤記がある(しかも何度も)。「ツ」も小書きではない。「朝日新聞」の連載記事「漢字とつきあう」への言及もあるが(p.45)、p.24-25「地区唯一の文字」の前半部は、確か同記事が取上げていたはずだ。
 それから、「寛+、」字のドットが象嵌みたいに粗くなっている(p.45)のはなぜ? 附録「常用漢字異体字」表(p.167)ではちゃんと表示されているのだが。ついでに言うと、JIS1997(JIS X 0208)で包摂されていた(こちらの連番(93)を参照)「寛」「寛+、」は、点のあるなしだけで区別されるのではなくて、ある種のフォントデザイン上ではその差異がわからないが、後者のウカンムリ下部の形状を「十十」と見なしているときがあって、その場合には、総画数が二画異なることになる。両者は、新JIS漢字(JIS X 0213)ではそれぞれ別のコードが割当てられている(こちらの「包摂規準の適用を除外される104字」を参照)。この作字などは、前掲の例字よりも画数の相違がわかりやすい。
日本の漢字のプリンシプル

日本の漢字のプリンシプル

 この本も、冒頭から「改定常用漢字表」の話題。こちらでは、「河野六氏」(p.81)、「玄(げんじょう)」という誤記(p.82)を発見。パッと見ただけで、これなのだから、ほかにもあるかも知れない。
 なお、本文の使用書体は「游明朝」。
 ところで、ポット出版といえば、非再販の永江朗『本の現場』を刊行した出版社ではないか。でも、1800円よりも安い価格で売られているのを見かけたことはなかったのだった……。

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 その後、『天草版伊保物語』(p.26)、「音(ぴんいん)」(p.108)、『日本語がびるとき―英語の世紀の中で―』(p.145。話題になった水村美苗さんの著作だが、正しくは『日本語がびるとき―英語の世紀の中で―』)、などの誤字を発見。「『日本国語大辞典 第二版』(小学館1972年)」(p.24)という書き方もまずいだろう。
 「読売新聞」に紹介されたという鎌田弘子さんの「鳥瞰図をとりあえずとよむというを一度(ひとたび)笑いたちまちさみし」(p.38)、最近どこかで見かけたなあとおもったら、竹内政明『名文どろぼう』(文春新書)にも引かれていたのだった(p.63)。こちらでは引用元が『新折々のうた』になっているから、「朝日新聞」でも紹介されたらしい。ちなみに『名文どろぼう』には、見坊豪紀の『ことばのくずかご』『ことばの遊び学』等からの引用もある。また、日本国憲法の第二十三条「学問の 自由はこれを 保障する」を「五七五の調べ」(p.32)と書いているが、これはポーズを置く箇所がおかしいのではないか。『法窓余話』からの間接引用、「相続は 死亡によって 開始する」(民法八八二条)、「こじきをし またはこじきを させた者」(軽犯罪法一条二二号)(いずれもp.33)が七五調、というのはわかるのだけれども。

名文どろぼう (文春新書)

名文どろぼう (文春新書)