梅田へ

晴れ。かなり暑い。
河出文庫のカバーが変わるのだそうですね。ぜんぜん知りませんでした。ところで、(右から五冊目の)ロード・オーシュ卿の『眼球譚〔初稿〕』が、実際のものよりもかなりぶ厚いように見えるのですが、気のせい? 
昼過ぎに、所用あって梅田へ。阪急古書のまちへ寄ったところ、なんと定休日。そこで仕方なく、紀伊國屋書店へ。そうか、今日は水曜日だったのか。ゴールデンウィークで、すっかり感覚が狂ってしまっていたのでした。今週末からのワゴンセールには行こう。
紀伊國屋書店では、文庫本を二冊購入。
伊藤秀雄編『黒岩涙香集』(ちくま文庫)
立石泰則『魔術師―三原脩と西鉄ライオンズ(下)』(小学館文庫)
後から知ったのですが、こんな経緯があったのですね。
だから『魔術師』の単行本には、文藝春秋版と小学館版とがあるのか…。
ここで余談をひとつ。『魔術師』でおもい出したのですが、最近、乱歩の「魔術師」を再読しました。明智小五郎と文代夫人の出会いも描かれている長篇です。
これに、妖怪「朱の盤(盆)」の話がすこしだけ出てきます。『ゲゲゲの鬼太郎』に親しんだ方であれば、ご存じだとおもいます。

(略)子供の時分よく聞かされた、お化けの話の中に、一人の子供が、真暗な町角で、朱盆みたいな顔をした、恐ろしいお化けに出会い、キャッと云って逃げ出して、別の町角まで来ると、よその小父さんに出会ったので、そのことを話す。小父さんが「そのお化けはこんな顔だったかえ」と云いながら、ニューッと顔を近づける。その顔が、何と、さっきのお化けとそっくりの朱盆に変っている。というのがあった。
(『魔術師』光文社文庫版,p.109)

「のっぺらぼう」の類型に属する話なのでしょうが、この妖怪は会津の諏訪の宮に出没した妖怪であるらしい。もともとの組合せは、「子供と小父さん」ではなくて、「若侍と女房」であるようです。また、ここにも、「奥州会津の国諏訪の宮」とありますが、「ちゃんとした」典拠が分りません。水木しげるの本や、妖怪の雑学本には、必ずといってよいほど、「会津の妖怪」として登場しています。
千葉幹夫編『全国妖怪事典』(小学館ライブラリー,1995)は、「シュノバン」を見出し項目として立て、外山暦郎の『越後三条郷談』(1926)を引き、「この辺りに青石塔があってよくないところといわれ、昔富豪がこの塔に金をうめたが、これを盗みにいく者はきっと化け物にあって盗み出せなかったという」(p.84)と書いています。
外山は、この話を「見附町(現在は見附市―引用者)近くの元町」で採取したのだそうです。
「越後」が先か、「会津」が先か。よく分りません。