島田荘司の本

雨。肌寒い一日。
昨日は、頼まれた仕事にかかりっきりだったので、更新ができませんでした。けれども、全くはかが行かず、その上かなり疲れました。奥里將建『四國の方言』(三省堂)など読了。
今日は、朝から大学へ。電車のなかで、島田荘司『夏、19歳の肖像』(文春文庫)読了。一九八八年に出た文庫版の「新装改訂版」だそうです。現実にはちょっとありそうにない展開。「第四章 海」あたりまでは、読むのが恥ずかしかった。なんだか、井上真介の『夏の別れ』(1981)みたいです*1。帯に「青春ミステリー云々」とあるのですが、これは「ミステリー」というよりも、「青春小説」として読むべきなのではないかとおもう。衝撃的な結末を期待してしまったではないか。ラスト間際では、『BEE FREE!』(1986)でしたっけ、羽賀研二のバイク疾走シーンを髣髴とさせるような場面もあります。けれども、そこそこ面白い小説ではありました。「なぜ夏は行ってしまうのか」―という、一時期大林宣彦(だったとおもうのですが)などが追究していたような「永遠のテーマ」に、青春の感傷を重ねあわせたかのような作品です。
それにしても、「新装版あとがき」で、島田氏自身が次のように書いていることがおかしかった。

未熟にもってきて、当時は流行作家の真似ごとをさせられており、これ(『夏、19歳の肖像』のこと―引用者)は確か九段のホテルに缶詰めにされて書いた。下手な上に急がされたのであるから相当なものであろうとは思っていたが、やはり相当であった。だから以前からこの作には筆を入れたいと思っていた。今回の手入れで、技術的にはかなりマシになったとは思う。(p.255-56)

授業は午前で終わり。その後、演習準備。研究室でKさんから、欧昌俊 李海霞『六朝唐五代石刻俗字研究』(巴蜀書店)を頂く。土日にでも、じっくり読むとしよう。
水木しげるの憑物百怪〈下〉 (小学館文庫)
水木しげるの憑物百怪〈上〉 (小学館文庫)
また、研究室の「新潮日本古典集成」を一冊借りる。
午後、散髪。サッパリしたかったので。
帰途、水木しげる水木しげるの憑物百怪(上)(下)』*2小学館文庫)を購入。単行本(学習研究社刊)の図版をオールカラーにした上で五十音順に排列し、上下二分冊にあらためた、いわば「完全版」です。解説をかいているのが、唐沢俊一さん(上巻)と小松和彦さん(下巻)だというのも嬉しい。
帰宅後、演習準備のつづき。

*1:映画のなかの少年(安藤一夫)は、もっと一方的なのですが。

*2:正確にいうと、百二十の憑物が載っています。おもえば水木しげるの本で、『世事百談』『和漢三才図会』などの書物の名をおぼえたものです。