こがね丸

日本の童話名作選 明治・大正篇 (講談社文芸文庫)
このまえ、書肆「R」へ行くと、蔵書印附の「名著複刻 日本児童文学館」(ほるぷ出版)を一冊六百円で売っていました。このシリーズの本は、中身はもちろんのこと、当時の造本まで再現しています。
佐藤春夫『蝗の大旅行』、新美南吉『おぢいさんのランプ』、千葉省三『トテ馬車』、山村暮鳥『ちるちる・みちる』、島崎藤村『ふるさと』、有島武郎一房の葡萄』、宇野浩二『赤い部屋』(乱歩ではない)、鈴木三重吉『湖水の女』、北原白秋『とんぼの眼玉』など、十四、五冊置いていました。
そのなかに、唐沢俊一著 唐沢なをき画『カラサワ堂怪書目録』(光文社知恵の森文庫)が紹介していた(p.180-84)、尾崎紅葉の『鬼桃太郎』もあったのですが(この作品はそのバカバカしさが確かに面白い)、これはブックオフで拾ったことがある*1ので買わず、『蝗の大旅行』か『ふるさと』を買おうとしたのですが、荷物になるであろうからと結局買わずじまい。
しかし、今、ちょっと後悔しています。
というのは、それらを買い逃したばかりに、いま講談社文芸文庫編『日本の童話名作選 明治・大正篇』(講談社文芸文庫)を「仕方なく」読んでいるからで、しかも藤村の『ふるさと』は、残念ながら抄録版なのです。また、佐藤春夫の『蝗の大旅行』や有島武郎の『一房の葡萄』も収めてあるのですが、文庫で読むのと、ズシリと重い堅牢なつくりの本で読むのとでは、ずいぶん読後感を異にするのだろうなあ―などと考えているところです。
しかし、なんだかだ言っても、やはり文庫というのは有難いもので、いつでもどこでも読める。これに如くは無し*2巌谷小波の名作「こがね丸」も収録していて、この作品は初めて読みました*3。単純なストーリーなのだけれども面白い。その単純明快な復讐譚が、かえって新鮮に感ぜられるのです。読後、すぐにおもい出したのが『わんわん忠臣蔵』。あるいは、『銀牙―流れ星 銀』*4。特に前者は、手塚治虫の「原案」による作品であると言われていますが、『こがね丸』の設定を意識して借用していることは明らかです。
さて今日は、ちょっとショックなことがありました。本を借りられないのは、六月十日まで―だとおもっていたのですが、なんと「二十六日」の聞き間違い。半月以上も違う。
なんだか損をしたような気分になり、悔しいので、また書庫に二時間籠っていました。

*1:函入で百五円!

*2:一体どちらの味方なのか。

*3:青空文庫でも読めるのですが、短くはないので、あえて読もうとはしませんでした。

*4:つまり、「銀」=「黄金丸」で、「赤カブト」=「金眸大王」。まあ、赤カブトに立ち向かう犬は「こがね丸」よりもずっとたくさん出てきますが。