稲生物怪録ブーム?

晴れ。
講義は昼まで。いつもながら、興味が尽きない内容。
レジュメ作成(切貼り)にとりかかるため、今日は午後三時半ころに大学を出ました。本を一冊、借りて帰る。
夜までずっと、レイアウトを考えたり、どこを引用するかで悩んだりしていました。
そういえば、坪内祐三さんの『古本的』(毎日新聞社ISBN:4620317195、『週刊新潮』(六月二日号)にはやくも載っていました。

意外なことですが、これはツボウチ氏の、初めての古本本です(「古本本」に傍点―引用者)。古書の森の、なんという豊かさ、深さ。希代の読書家で古本好きの著者による書物をめぐるエッセー。

そしてその下には、東雅夫編『稲生モノノケ大全(陽之巻)』(毎日新聞社)の広告が。姉妹編の「陰之巻」は、一昨年の秋に出ています。
なぜか、一昨年ころから、「稲生物怪録(いのうもののけろく)」の「静かな」ブームがつづいています。同年には荒俣宏『平田篤胤が解く「稲生物怪録」』(角川書店)も出ており、『日本経済新聞』の「活字の海で」(十一月九日付)がこれらの本を取上げています(「『稲生物怪録』に脚光」文化部 中村稔)。
ついでに、「稲生物怪録」をご存じでない方のために、この新聞記事から物語の内容についてかかれた部分を引用しておきます*1

物語の主人公は広島・三次*2の武士、稲生武太夫(幼名・平太郎)。寛延二年(一七四九年)、隣人の相撲取りと怪談を交互に話す百物語をしたのがきっかけで、十六歳だった平太郎の家にあらゆる妖怪が押し寄せる。冷静な態度で妖怪を追い払った彼は、妖怪の「魔王」から霊験あらたかな木槌をもらう、という内容。

また昨年は、杉本好伸『稲生物怪録絵巻集成』(国書刊行会)が刊行され、広島県立歴史民俗資料館は「開館二十五周年記念特別企画展」として、「稲生物怪録と妖怪の世界―みよしの妖怪絵巻」を開催しました。
それから、ついこのあいだ出た東雅夫『妖怪伝説奇聞』(学習研究社)には、「魔王の木槌を求めて」という章が収めてあります(ただし初出は、月刊誌『ムー』一九九六年十二月号/二〇〇二年一月号)。この「木槌」とは、もちろん平太郎が妖怪から譲り受けた木槌のことです。

*1:内容をお読みになれば、稲垣足穂がかいていたあれだとか、せなけいこ『うさたろうのばけもの日記』(昔もっていました)や泉鏡花草迷宮』のモデルだ、とか、思い出す方もいらっしゃるかと存じます。

*2:「物怪プロジェクト三次」というグループもあるそうです。