楽天夫人

雨。
午前、散髪。
床屋の附近にあるレコード店がセールをやっていて、EMIレーベルの輸入版を中心に販売していました。一枚590円(二枚で890円)とか一枚790円とか、四枚組で990円とか。この「四枚組で990円」というのは、ドイツの新興レーベル「クアドロマニア」*1。ジャケットに、カナで「クアドロマニア」とあるのがなんだか可笑しい。楽曲解説などは附いていませんし、録音の「寄せ集め」が多いのですが、クナッパーツブッシュパルジファル(1951年、バイロイト)なんかも入っているみたいです。
迷った結果、 SCHUBERT “Piano Trios Nos.1&2” (EMI)を購入。二枚組で990円。二番の第二楽章は、たしか、キューブリックの『バリー・リンドン』(1975)の挿入曲だったと思います。また、一枚目のCDにボーナス・トラックとして附いている “Notturno” は、映画の題名にも使われています。すなわち、フリッツ・レーナー『夜曲〈ノットゥルノ〉 シューベルト 愛の鼓動』(1986)。シューベルトの晩年の姿を描いた佳品です。
帰宅してから、いろいろな用を済ませて、夜中に番匠義彰『楽天夫人』(1956,松竹大船)を観る。原作は中野實。音楽は奥村一。撮影は生方敏夫。中野實の原作は読んだことがないので、そのタイトルからして大船調のコメディかと思っていたのですが、さにあらず。プロットは、『めし』(1951)にやや似ていて、夫婦が遠まわりをしながらお互いを認めあう、という内容です。主人公の夫婦役に、大木実(坂口今朝弥)と淡島千景(ミドリ)。大木実は渋い演技を見せてくれるし(ラストの演技がとりわけ素敵だ)、淡島千景は相変らず綺麗です。脇を固める佐野周二(浅見輝雄)、小林トシ子(小野紅子)、片山明彦(本田隆夫)、朝丘雪路(ハルミ)、坂本武(その父正吉)、多々良純(井上作太)、幾野道子(幾子)などがもう、全員良くて、「せっかくこの役者を使っているのにもったいない」、という不満が全くありませんでした。これはわりと珍しいこと。
さて明日は、古書市へ行こうと思います。

*1:VOX音源のライセンスが、TIMなどと同様、やや怪しいという噂も聞いたのですが…。