紙の罠

レジュメづくり、論文読み、読書。
『霧の旗』を再読したついでに、新潮文庫の清張作品を一つ所にまとめよう、と思い立ったのだけれども、『水の肌』や『共犯者』が見当らぬ。一体どこへ行ってしまったのだろう。面倒なので、探すのをやめる。
息抜きのため、近所のSへ。別冊宝島の『日本「霊能者」列伝』を読む。貴重な写真が満載で、それが面白い。巻頭の五人*1竹内巨麿三田光一、高島嘉右衛門あたりは知っていたが、国安仙人とか本吉嶺山とかは知らなかった。一柳廣孝氏(拙ブログでふれたことがある)の文章も収めてあり、薄いながらもなかなか読みごたえがある。「イントロダクション」には、「霊能者は特殊能力者なのか詐欺師なのかという問題よりも、結局は『人生』という同じ地平に立っているという結論の方が、(超常現象や霊能力がもたらすものよりも―引用者)我々にとって有益なのは間違いない」とある。
都筑道夫『紙の罠』(角川文庫)を読む。これは、消閑のため入店した「満遊書店」(坪井店)にて五十円で入手したもの。まさに僥倖であった。その映画化作品『危いことなら銭になる』(1962,日活)は、ついこのあいだ鑑賞したばかりである。
原作の前半部には、高原洋子と友子という二人のヒロインが別々のシーンに出てくる(中平康の映画には洋子が出てこない)ために混乱をきたし、行きつ戻りつしながら読んでいたが、その後は一気に読んだ。映画とは違い*2、馴れ合いではない共犯関係を精緻に描いていて、非常に面白かった。映画はコミックな部分をかなり強調していた*3のだけれども(だからラストの銃撃戦が場違いなほど激しく感じられるわけだが)、原作はコミカルかつスリル満点の「サスペンス」なのだ。それぞれ全く別の作品として愉しむべきなのだろう。
夜、BS2で放送される『成瀬巳喜男 記憶の現場』を録画。

*1:御船千鶴子出口王仁三郎宜保愛子藤田小女姫長岡良子

*2:『紙の罠』が「原作」なので、こういう表現はおかしいのだけれども。

*3:しかし、短いカットつなぎで、緊張と弛緩をうまく使い分けていたように思う。