ばんざい

大学へ。
ブックオフに寄る。そこそこの収穫があった。淀川長治淀川長治の活動大写真』(朝日文庫)、川口松太郎『愛子いとしや』(講談社文庫)、小沢昭一/宮腰太郎『旅ゆけば 小沢昭一的こころ』(新潮文庫)、島尾敏雄『日の移ろい』(中公文庫)、森田誠吾『銀座八邦亭』(文春文庫)を各105円で。『日の移ろい』が105円というのは嬉しい。しかも帯附きだ。
また、Oに寄って『世阿弥随筆―世阿弥生誕六百年に寄せる諸家随筆集』(檜書店)を購う。210円。これは、世阿弥の生誕六百年(1963年)を記念して雑誌『観世』に寄稿された、諸家の「巻頭随筆」を収めたものである。「世阿弥」に興味があって買ったわけではない。豪華な執筆陣に惹かれたのである。栗林貞一、生島遼一河竹繁俊、野上彌生子、郡司正勝川瀬一馬、高木市之助、久松潜一小西甚一、釘本久春、西尾実、林屋辰三郎、田中重太郎、三宅襄、土岐善麿生方敏郎、廣末保、安倍能成唐木順三、松村緑、…といった面々。
他に杉森久英『浪人の王者 頭山満』(河出文庫)があったが、800円だったので買わず。
石井研堂明治事物起原Ⅰ』(ちくま学芸文庫)の「万歳の始め」(p.271-72)を読んでいたら、既読感があったので、なぜだろうか、と考えていた。そうしたら思い出した。眞鍋儀十『浮世哲學 癇癪玉』(中和書院)の「萬歳―芽出度いことを萬歳と云ふは―」を読んだばかりだったのだ。眞鍋はこの本で、『明治事物起原』の「近年万歳を高唱することは、明治二十二年二月十一日に始まる。この日帝憲法発布の盛典あり、主上観兵の式を行はせられる。ときに大学生、鹵簿を拝して『万歳』を歓呼せしに始まる」*1という記述を引いたうえで、「明治事物起原はさう云つて居るが、東京高等師範の田中教授は憲法発布に際し両陛下市中御巡幸の砌り、東京帝国大学の学生の唱へたものであると云つて居る」(p.81、原文旧字)と書いている。
しかし、若槻禮次郎『明治・大正・昭和政界秘史』(講談社学術文庫)の「『ばんざい』の由来」(p.19-32)によれば、『明治事物起原』の記述のほうがどうやら正確であるらしいことが分る。余談であるが、「万歳三唱」は和田垣謙三の案になるもので、本来は「万歳、万歳、万々歳」であったのだが、三声めの「万々歳」は結局「万歳」になってしまった。そのあたりの事情も、「『ばんざい』の由来」に述べられている。
また永井荷風の随筆「花火」にも、当時の情景が描かれているらしいが未見である。
そういえば、いつか「万歳」の字音(「マンザイ」「バンセイ」「バンザイ」)に関する論文を読んだ筈だが、忘れてしまった。森有礼が「奉賀」を提案した、という話はどこで読んだのだっけ*2

*1:眞鍋の引用とは若干の異同がある。

*2:「『ばんざい』の由来」には森も出てくるが、「奉賀」云々の話題は出てこない。