カッコイイ浜村純

田中徳三『剣に賭ける』(1962,大映)を観た。
さすがは田中徳三、手馴れたもので、役者の「目」の動きに敏感である。「目線の芸」とまではいかないけれど、ごく自然に被写体の視線の先を追っている。職人芸だ。
千丈ヶ原での、千葉周作市川雷蔵)と寺田七郎太(天知茂)の対決が見もの。『眠狂四郎無頼剣』(1966)の狂四郎と愛染を髣髴とさせる。だが、寺田は「邪剣」である。まるで檜垣鉄心のような人物だ。
脇役陣も素晴らしく、高柳又四郎(浜村純)がなんと、抜群に格好良いのだ*1。その他、浅利又七郎(石黒達也)、了海(加藤嘉)、森下義太郎(伊達三郎)、千夜(高千穂ひづる)、お染(万里昌代)、月山坊徹厳(上田吉二郎)…と錚々たる顔ぶれ。川本三郎氏も、次のように書いている。

又四郎を演じているのは名傍役、浜村純。痩身にして屈強、凄みがある。この時代の映画は、石黒達也といい浜村純といい傍役の層が厚かった。(川本三郎『時代劇ここにあり』平凡社,p.558)

東雅夫編『妖怪文藝巻之三 魑魅魍魎列島』(小学館文庫)を読む。あいかわらず豪華な執筆陣である。知里幸恵石上玄一郎岡本綺堂泉鏡花内田百輭田中貢太郎小松左京白洲正子林家正蔵河竹新七…。平井呈一訳の小泉八雲「幽霊と化けもの」とか、水木しげる「ノツゴ」とかいったものまで読める。
「伊波南哲(いば・なんてつ)」、恥ずかしながら、これまで「いは・なんてつ」と読んでいた。「伊波普猷」と同じく、姓は濁らずに読むと思っていたのだ。……などと書いていたら、また『古琉球』(岩波文庫)を引っ張り出して、つい読みたくなる。というか読んでしまっている。「琉球に固有の文字ありしや」。「P音考」。

*1:もちろん、あの「浜村淳」ではない。高柳は「音無しの剣」で名高い剣士。映画では、寺田の「邪剣」に敗れるのだが、「負けてなお格好良い」浜村純なんて、これ以外ではお目にかかったことがない。