映画人とテレビドラマ

テレビドラマ 伝説の時代
升本喜年『テレビドラマ 伝説の時代』(扶桑社)。最近たいへん面白く読んだ本。感想を書くと長くなってしまうので、少しだけ。
とりわけ印象に残るのは、井上梅次鶴田浩二、瀬口城一郎、田宮二郎あたりか。今をときめく作家の脚本家時代や、無名時代の大俳優、後に首相となる政治家の姿なども描かれていて楽しい。映画人のテレビに対するスタンスの変化や、視聴率の怖さ(『雲をつかむ男』や『渦』を思い出した)にかんする生々しい証言も沢山つまっている。
鶴田浩二については、「純粋さと嘘っ八、謹厳と俗っぽさ、真と偽の間を演じて日常を生きている」(p.189)と評しており、その「偽」の部分(本書でいうとたとえばp.159)について書かれたものを(ごく最近)読んだのだが、何だったっけ。失念した。
ところで、正式の証明によれば、鶴田はマキノ正博(?)に「大根役者」と言われたそうだが、『お茶漬の味』撮影時には(「ノンちゃん雲に乗る」。分る方には分るはず)、小津安二郎に「おいトミさん(進行部の清水富二―引用者)、松竹はいつから八百屋を始めたんだ。車で大根を運んできやがった」と、半ば「あてつけ」のようなかたちで痛烈な皮肉を浴びせかけられたそうだ(p.188)。「大根」とは、むろん「大根役者」のことである。