めちゃくちゃなフィナーレ

ここ数年、イヴはフランク・キャプラの『素晴らしき哉、人生!』(1946)を観ているのだけれど、今年はとても観られなかった。『素晴らしき哉、人生!』といえば、瀬戸川猛資氏の『夢想の研究』が想起される。

夢想の研究―活字と映像の想像力 (創元ライブラリ)
人生に絶望して自殺しかけたジェームズ・スチュアートを、天国の見習い天使ヘンリー・トラヴァースがクリスマスの晩に救いにやって来て、“彼が存在しなかったもうひとつの世界”を見せてやる、というストーリーのこの作品は、「オズの魔法使」と並び称せられるアメリカン・ファンタジー映画の古典である。同時にまたこれは、西欧の生んだクリスマス映画の最高傑作でもある。プロットの下敷きになっているのがディケンズのクリスマス・ストーリー『クリスマス・カロル』であることは、見る人が見ればすぐに気がつくだろう。
が、そういうこととは別に、わたしはかねがねこの映画に感嘆していた。なんというか、普通の映画の規格をはずれた「すごさ」を感じるのである。とくにラストの三十分。このめちゃくちゃなフィナーレは、まったくすごい。演出とか演技とか映像とかいったものを超えた何かがある。(『夢想の研究―活字と映像の想像力』創元ライブラリ,p.186)

その「めちゃくちゃなフィナーレ」に涙した記憶もある。個人的には、どしゃ降りの中での結婚式のシーンが好きである。しかし公開当時、この映画は興行的に大失敗した。それはよく知られている。
双葉十三郎氏は、「完璧ではないが…」と前置きした上であるが、この作品が佳作であることは認めている。
高橋治氏の「ひと模様 映画模様」の連載(日経)終る。チト寂しい。日本映画の現状を嘆じてむすびとしていた。来年から、多和田葉子氏の「溶ける街 透ける路」が始まるという。