棺の中の悦楽

所用あって出る。
新古書店が五百円引きしてくれるというので、ついでに寄り、千数百円ぶんの本を購った。
伊藤清司かぐや姫の誕生 古代説話の起源』(講談社現代新書)、板坂元『日本語の表情』(同前)、江村洋*1ハプスブルク家の女たち』(同前)、都筑道夫『危険冒険大犯罪』(角川文庫)、見川鯛山『本日も休診』(集英社文庫)、山口瞳『私本歳時記』(新潮文庫)、井上靖わが母の記』(講談社文芸文庫)、笠智衆『俳優になろうか〔私の履歴書〕』(朝日文庫)、目黒考二『活字学級』(角川文庫)など。
『危険冒険大犯罪』には、『悪意銀行』『紙の罠』の近藤庸三、土方利夫コンビが活躍する話も入っている。見川鯛山の本は、前から気になって仕方がなかったのだが、山本容朗の解説(獅子文六も出てくる)に惹かれて遂に購入。鯛山は、昨夏に亡くなってしまったので、追悼の意も込めてじっくり読もうと思う。
棺の中の悦楽 悽愴篇―山田風太郎ミステリー傑作選〈4〉 (光文社文庫)
本日のお供本は、山田風太郎『棺(かん)の中の悦楽』(講談社大衆文学館)。ちょっと刺激の強い描写もあったが、なかなか面白く読んだ。主人公・脇坂篤が雪の中を彷徨するあたりは、さながらハンス・カストルプの如くである。最後の最後(ラストの二頁)に、まさかまさかの大どんでん返しが待ちうけていようとは(画像は光文社文庫版)。
「蓋棺事定」のことばどおり、山田風太郎のエンターテイナーとしての盛名はむしろ没後に高まったように思えるが、彼が生前「つくりもの」と措定していた作品群は、それゆえにこそ楽しめる。これは逆にいえば、「ほんもの」と思うと素直に楽しめない、ということである。

*1:この方も、昨年亡くなられたみたいだ。