クライバーの名盤

阪神古書籍即売会に行こうと思っていたのだが、行けなかった。熱を出して、寝込んでしまったのだ。
昨日のアルバイトが体にこたえたのか、新古書店に寄ったのがいけなかったのか。

ベートーヴェン:交響曲第5&7番

ベートーヴェン:交響曲第5&7番

布団のなかで、カルロス・クライバーウィーンフィルのこの名盤を何度も聴いていた(私が持っているのは、画像とは違って輸入版なのだが)。
そのきっかけは、tougyouさんが書かれた記事を拝読したことと、芥川也寸志『音楽を愛する人に―私の名曲案内』(ちくま文庫)を読んだことだ。この本は、第五番も七番も取り上げているのだが、特に第七番*1の第二楽章については、以下のように書いている。

当時緩徐楽章として扱われた第二楽章は、最初から六小節間は旋律線が全く動かず、和声進行とリズムにその表現のすべてが託されています。〈永遠のアレグレット〉と呼ばれるこの楽章は、すべてのベートーヴェン音楽の中で、最も素晴らしいものの一つです。(中略)なおこの交響曲の第二楽章ほど、ベートーヴェンの他の交響曲と比べて、指揮者の個性によってまちまちな表情を与えられるものもなく、いろいろな名指揮者といわれる人たちのレコードを聞き比べてみるのもまた一興でしょう。姉妹芸術といわれる絵画とは違って、そのいずれも正真正銘本物のベートーヴェンであること、いうまでもありません。(pp.28-29)

私が、(約八年前に)第七番を初めて聴いてみたくなったのは、「アダージョカラヤン」に収められた第二楽章に大感動したからであるし、『VISA』(1997年12月号)で春風亭小朝が「お気に入りの1枚」として上のCDを挙げていたからでもある。しかし、クライバーの名盤にすっかり感化されてしまったものだから、その後聴き比べをしてみても、しっくりする他の演奏がなかなか見つからないというのが少し残念ではある。
ところで、第五番を聴いてるうちに気づいたことがある。かつて私は、「勝利への讃歌」とでも言うべき第四楽章(第三楽章から切れ目なくつづく)が最も好きだったのだが、いつの間にか第二楽章のほうが好きになっていたのである。こんな変化があるのも、クラシックを聴く愉しみのひとつである。
(以上、1月17日記す)

*1:ワーグナーはこの曲を「舞踏の聖(神)化」と評した。