惜別会と古書店と

惜別会のため、大阪市内の某ホテルへ行くことに。早めに出て、大阪駅前第三ビルの汎書店で、鈴木和年『ある映画人の定年』(朝日文庫)250円、江藤淳アメリカと私』(講談社文庫)150円、小泉信三『読書雑記』(潮文庫)100円、堀辰雄『聖家族・燃ゆる頬 他九篇』(角川文庫)100円を買う。
杉本梁江堂の移転を知らせるハリガミを眺めていると、某先生に声をかけられる。
永井古書店で、矢崎源九郎『これからの日本語』(三笠書房)、古谷をさむ『ことばのしをり』(新生舎)、平野威馬雄『おとなを寝かせるお伽噺』(あまとりあ社)三冊1300円、上田哲農『日翳の山 ひなたの山』(中公文庫)300円、林達夫『思想の運命』(中公文庫)275円を購った。
平野威馬雄の新書本は古書市で何度かスルーした記憶があるが、岡崎武志さんの本を読んで、和田誠に注目していたところだったので、そのつながりでやはり気になって購入。平野威馬雄は言うまでもなく平野レミの実父、ということは和田誠の義父にあたる。平野威馬雄の本というと、私は多分、ちくま文庫版の『くまぐす外伝』くらいしか持っていないが、以前手放した「お化け本」のなかに平野が編んだ著作があったはずで(二見書房刊だったっけな)、いまおもえば実に勿体ないことをしたものである。『おとなを寝かせる〜』は、あらためて見てみると、平野威馬雄のエッセンスとでも云うべき内容になっている。「フランスの與太郎」(pp.106-13)という本業にかかわりそうな一篇があるほか、レミならぬ「ルミの場合」(pp.151-55)はやはり「混血児」の話であるようだし、「艶笑降霊術」(pp.31-34)、「早春の山中で幽霊を後妻にした話」(pp.77-80)、「およに稻荷靈現記」(pp.156-67)など、幽霊やお化けに関する話もある様だ。
『日翳の山 ひなたの山』は、『中公文庫解説総目録1973〜2006』(中公文庫)の巻頭座談会「中公文庫会読」で、池内紀さんが話題にされていた本。書影も載っていたので、チェックしていたのだった。

池内 上田哲農の本を苦労して集めていたとき、中公文庫で出たので、びっくりしました。哲農さんの絵を、カバーにも文中にもそのまま使っていた。こういうスキ者の本を出すのは、会社がよほどいい加減なのか(笑)、非常に編集者を信頼しているか、のどちらかだと思います。(p.24)

上田哲農の中公文庫は、このほかに『山とある日』『きのうの山 きょうの山』が出ているみたいだ。
中公文庫の「山」シリーズ、ということで私が想起するのは西丸震哉氏で、西丸氏の中公文庫は現在も何冊か活きている。しかし、「大雪山SOS事件」(遺体鑑定ミスで捜査がやや迷走した怪事件)を取り上げた『机上登山』(博品社)がどうも文庫化されていないようなのだ。この本はもう絶版みたいだし、中公文庫に入れてくれないかな。

夕方から惜別会。あまり詳しく書けないのがアレだが、楽しかった(多くの方々が去られるのはちょっと寂しかった)。二次会、三次会と誘われるままに行く。明らかに「ノリの悪い」学生の部類に入るこの私をカラオケに誘ってくれた某君、某さん、どうも有難う。無理をいって引き止めてしまった某さん、御免なさい。そしてお疲れさまでした。