このあいだ、Tさんが、『名探偵コナン』の「面白さ」を力説しておられたので、ちょっと見てみる積りでテレビをつけた(コナン*1は、八年ほど前まではよく見ていたのだが、最近は見ていなかった)。
タイトルが、「コナン変な子」という回文だったので*2、ますます内容が気になる。これがそのまま殺人事件の動機や方法の謎を解く手がかりになるというわけでもないが、本編中にも、「ママが私にしたわがまま」とか「神か? 狼か?」とかいった回文が出て来た(他は忘れてしまった)。
回文といえば、『土屋耕一回文集 軽い機敏な仔猫何匹いるか』(角川文庫,1986。単行本は1971年刊)が有名であろうが、私は、久世光彦「マカオのおかま」(『ニホンゴ キトク』講談社文庫所収,pp.106-11)の一節を思い出す。
《回文》と言えば、ずっと以前、「ムー一族」(1978〜79年に放送―引用者)というテレビ番組をやっていたころ、生放送で、視聴者から自作の回文を募集したことがあった。ことば遊びのファンというものは、世間に結構多いもので、毎週何十通もの回文が寄せられたが、その中でいちばん上手いと思ったのは、《宇津井健氏は神経痛=ウツイケンシハシンケイツウ》という奴で、いちばん凄いのは、《ヘアリキッド、ケツニツケ、ドッキリアヘ》だった。世の中には妙なことを考える人がいるものである。けれど、回文は短くて可笑しいのがいい。そういう意味で私が降参したのは、《マカオのおかま》であった。それ以来、アジアの地図を見るたびに、思い出す。(pp.107-08)
ちなみに、「マカオのおかま」は、1985年に書かれた土屋氏の「あとがき、または回文のつくり方」*3(角川文庫版『土屋耕一回文集 軽い機敏な仔猫何匹いるか』所収)でも紹介されている。