知的生活の方法

曇り。
知的生活の方法 (講談社現代新書)
グレアム・グリーン 丸谷才一訳『ブライトン・ロック』(ハヤカワepi文庫)をすこし読む。
本を整理していると、渡部昇一『知的生活の方法』『続・知的生活の方法』(講談社現代新書)が出て来たのでざっと読む。実をいうとこの『知的生活の方法』は、十年ほどまえに初めて読んで感銘をうけた本なのである(もっとも、反撥を感じる部分もないではなかった)。前半、それも特に購書に関する記述に衝撃を受けた。
とは言い条、呉智英氏などが手厳しく批判していたせいか、「感銘をうけた一冊」として紹介することがひどく躊躇われ、小谷野敦氏が『バカのための読書術』(ちくま新書)で「そんなに悪くはない」と書いてくれるまではずっと沈黙を守っていたのだった(べつに守らなくてもいいのだが)。例えば高校生のころ、「影響を受けた書物」を二十冊ずつ紹介しあうという企画があったのだが*1、その際も、この書にわざと言及しなかったことを憶えている。
学部生のとき、恐る恐る友人に薦めてみたら、やはり反応は芳しくなかった。それどころか、「え、××君て右翼だったの?」とまで言われ、二の句が継げなかったものである。それが、「本の内容を見るまでは、決して先入見を抱くまい」と強く思った最初だった。
ところで筒井康隆『みだれ撃ち瀆書ノート』(集英社文庫)は、『知的生活の方法』についてこう書いている。

著者が想定している読者は学術論文などを書く学者を中心としているらしいので、われわれ作家にはあてはまらないことが多い。それでも、自分がその通りやっているかどうかはともかく「まったく同感」と思う部分は多い。(略)
この本、ベスト・セラーになっているが、自分の生活がいかに知的でないかを知って絶望するやつがずいぶんたくさん出るのではないかと思う。しかしこれはあくまで、知的生活者のひとつのタイプだけを書いたものであるから、まあ、あまり気にしなくてよろしい。著者が自信過剰なのだ。(pp.76-78)

*1:ヘッセ、ゲーテ小林秀雄カミュ、ジッド、ロートレアモン谷崎潤一郎、乱歩などの本を挙げた気がするが、いま考えてみるとかなり恥ずかしい。明らかに「身の丈に合わない」ものばかりだからである。