漢字とつきあう

佐藤優の二審有罪判決、思ったよりも騒がれてないなあ。
現在朝日新聞に連載されている、「漢字とつきあう」を読んで思ったこと。
「衆参両院のホームページには『議員氏名の正確な表記』一覧がある。一般的な旧字・異体字も多いが、違いが分からないものもある。民主党菅直人代表代行の『直』は2画目がやや斜めなのが『正しい』。だが菅氏の事務所では『日常的には使っていません』」(2007.1.29付「漢字とつきあう(2)」)。では、一体何のための「正確な表記」なのか。
検索してみよう。衆議院議員これで、参議院議員これだそうだ。衆議院では「正確な表記」となっていて、参議院の方では「正字」となっているが、これは多分同じことを意味するのだろう。記事には、「一般的な旧字・異体字も多い」とあるが、そんな印象は全く受けない。
二点しんにょうでなければ「自分でない」気がする、ハシゴ高でなければ「間違い」、だとするこのテの意識の発生というものは、一体どれくらい昔まで遡れるのだろうか(いわゆる「外字」の発生以前にはあったのだろうか)。例えば保利茂が、「保」字の七画目はハネなければ「正字」ではない、などと思っていたとは、どうも考えられない。もっとも、保利耕輔氏の場合も、誰かの入れ知恵だという可能性がある。
「角」の最終画が突き抜けるのが私の名(姓?)の正しい表記だ、とか言っていたのは誰だったっけ。角栄ではなかったと思うが。
一方、旧字(正字)でなければ認めない、というのもある。有名なのは團伊玖磨。「団伊玖磨様」と宛名書きされた郵便物は中身も見ずに破り捨てていたという話。

「漢字とつきあう(3)」(1.30付)は、電子辞書も含めた漢和辞典の検索機能に関する話題。
そういえば、『現代漢字辞典』(サンルイ・ワードバンク)が導入した「漢ぺき君」方式というのがある(漢字の検索方法はリンク先参照)。例えば適当に「かお」と入力してみると、「顴」(かん・おおがい)が引ける。しかし、左部(「カン」)を音のない構成要素と認識した人が、「んお」(ん・おおがい)と入力したとすると、何故か「顴」が引けない。この方式に慣れるまでには、「くくく」(くさかんむり・くち・くち)でも引けることに気づくのに時間がかかりそうだ。それに、「んくく」で「顴」が引けないというのは(「勸」なら引ける)、一体どういうことか。
また例えば、「鍾馗」等の「馗」字が読めない場合、これは「きく」(きゅう・くび)では引けるが、「くく」(く・くび)、「こく」(ここのつ・くび)では引けない。適当に入力してみただけでもこんな感じなのである。この方式でも、色々試してみなければ目的の文字に辿りつけないことがありそうである。しかし、字形に注目した検索機能としては、四角号碼よりもずっと分かりよい。
昨年には、『ウソ読みで引ける難読語辞典』(小学館)というのも出ている。例えば、「不知火」を「ふちか」で引けるというわけだ。しかし、アマゾンのレビューにあるとおり、ウソ読みを正しい読み方であると思い込んでいる人に対しては効果を発揮しそうにない。
難読語辞典ということで思い出したが、遊子館の『日本難訓難語大辞典』は、ちょっと……。出典名が、『源氏物語』『万葉集』とだけ記されているのは、いやはやどうも……。