一月・二月に観た映画

某さんに、「ことし観た映画」のご紹介を約したのですが、それを年末に行うとなると、記憶が曖昧になりそうですので、キリのよいところでまとめて紹介して行くことにします。
今回は一月・二月に観た映画を挙げておきます。月によって本数にかなりムラがあるでしょうから、そのあたりのところは調整するようにします(四箇月ごとに紹介するなどして)。

マイケル・クリストファー『ポワゾン』(2001、米)
ジョン・ヒューストン『マルタの鷹』(1941、米)
岩間鶴夫『美貌と罪』(1953)
貞永方久球形の荒野』(1975)
マキノ正博『鴛鴦歌合戦』(1939)
黒澤明隠し砦の三悪人』(1958)
伊藤大輔『反逆児』(1961)
瑞穂春海『見事な娘』(1956)
原田眞人さらば映画の友よ インディアンサマー』(1979)
成瀬巳喜男『薔薇合戦』(1950)
森一生『あの試走車を狙え』(1967)
マーク・サンドリッチ『気儘時代』(1938、米)
緒方明『饗宴』(2006)
山本薩夫華麗なる一族』(1974)
河崎実『あっ! 生命線が切れている!』(2006)
河崎実『あっ! この家にはトイレがない!』(2006)
河崎実『あっ! お皿に首が乗っている!』(2006)
ティーヴン・ソダーバーグ『ソラリス』(2002、米)
穂積利昌『この世の花 第一部慕情の巻』(1955)
河崎実いかレスラー』(2004)
穂積利昌『この世の花 第二部悲恋の巻』(1955)
バーリン・ケニェレシュ『夜明け前』(2005、ハンガリー
河崎実『元祖 電エース』(2005)
河崎実コアラ課長』(2005)
木村荘十二『只野凡児・人生勉強』(1934)
(*は再見以上)
以下メモ。
『マルタの鷹』は、何度か観ないと筋がのみこめない(「ブ」で拾った小鷹信光訳のハヤカワ文庫、未読なのだった。はやく読まないと)。三回目にしてようやく分かった。ボギーはいいけれど、そんなに「名作」と言えるかな。個人的には『三つ数えろ』のほうがいい。『美貌と罪』はまさに「昼メロ」。淡島千景、はじめての汚れ役なのではないか。『隠し砦の三悪人』は初めてスクリーンで観た。初期の黒澤映画は、やはりスクリーンと親和性がある。『あの試走車を狙え』は、「黒いシリーズ」に加えてもよさそうな産業スパイ秀作。題名からしてそれを意識しているのがわかる(田宮二郎主演だし)。『気儘時代』はフレッド・アステアジンジャー・ロジャースコンビの復活作品。有名なゴルフ・ダンスは見もの。『饗宴』は正しくコメディである(日活ロマンポルノふうコメディ)。原作は重松清。『華麗なる一族』は、樋口尚文氏が言っていたとおりナレーションが多用されているが、カット割もきわめて説明的。演出も古風で、良くも悪くも「山本調」。『ソラリス』は、タルコフスキー惑星ソラリス』のリメイク版。主演のジョージ・クルーニーが記者の「難解」というコトバに敏感に反応したのも頷ける。これが難解だったら、ゴダールは一体どうなるんだ? 妻との関係をクロースアップしたことによって、むしろ難解からまぬかれていると思うのだが(つまり恋愛映画としての側面もある)、そうであるがゆえに、ソダーバーグやジョージの思わくからは離れて、“George Clooney’s naked butt”なんかがおもしろおかしく取り沙汰されることさえある。河崎の一連の作品はなかなか面白い。『元祖 電エース』(「古典的なカットバックを…」というナレーションが可笑しい)は、こりゃ正に「ウルトラファイト」だと感動していたら、なんだ、そういう説明がすでになされていたのね。「人情紙風船」の字幕には笑った。三十分の尺だが、旧作群(1989年製作)と新作群とから成る連作で、新作のほうには萩原佐代子(電A子役)が出ていた。ユリアン! ダイナピンク! レー・ネフェル! やっぱり八十年代イズムだ……。「自作を語る」で河崎監督が、「俺がやっぱり泣いたのはね、ウルトラマンが帰ったときと、セブンが帰ったときと、飛雄馬が負けたときと、タイガーが負けたときと」、と語っていたのが印象的だ。「泣かせるのは簡単だ」「だから泣きに行くのはもう嫌なんですよね」。そのとおりだとおもう。ショートフィルム『夜明け前』は、作品の拠って立つところの back born を知らないと、ちゃんと理解出来そうにない(悲劇だというのは分かる)。だが、無機的なプロペラ(トラック、パトカー)の乾いた音と、小麦が風に戦ぐさわさわという音とが対照的で、深い印象を残す(ラストで希望が見出される)。何とワンシーン・ワンカット。『只野凡児・人生勉強』は、「就職運動の巻」「家庭教師の巻」「社員入門の巻」の三部連作。P.C.L設立三本目の映画で、日本橋白木屋とのタイアップ作品だという(どうりで、白木屋がやたらと出て来るはずだ)。原作は麻生豊のマンガで、劇中のキャラクターは原作の造形をほとんどそのまま踏襲しているとの由。音楽は紙恭輔。作詞がサトウハチロー徳川夢声。主演は藤原釜足(只野凡児)。丸持社長役に丸山定夫(メイキャップが笑える)、その妻役に細川ちか子、じゃじゃ馬娘に堤真佐子。もっとも印象的だったのは、ギャング・ビルの月五郎役の大辻司郎。生駒雷遊が特別出演しているとかで、どの役なのか分からず(顔がよく分からない。『いろは交友録』の似顔絵やグーグルのイメージ検索ではちょっと分かりにくい)、ググってみたが分からなかった。「日本映画データベース」では、古川緑波も出演したことになっているが、ロッパなんて何処にも出て来ない(ネット上の番組表の多くがこの誤りをそのまま引用しているようだ)。また同作品は、清川虹子(下宿のおかみ)の銀幕デビュー作でもある。