映画を読む本

ティーブン・ジェイ・シュナイダー総編集『死ぬまでに観たい映画1001本』(ネコ・パブリッシング)

死ぬまでに観たい映画1001本
映画のベスト・チョイス本が好きです。たとえば、双葉十三郎さんの『外国映画 ぼくの500本』『日本映画 ぼくの300本』(いずれも文春新書)、淀川長治さんの『淀川長治映画ベスト1000』(河出書房新社)、佐藤忠男さんの『わが映画批評の50年』(平凡社,巻末に「私が選んだ八〇〇本の映画」というリストが収録されています。帯では、なぜか「私の選んだ800本の映画」となっています)、小林信彦さんの『ぼくが選んだ洋画・邦画ベスト200』(文春文庫)など、手のとどく範囲内であれば、見つけるたびに買ってきます。
そんな「ベスト本」に、圧倒的なデータとヴォリュームを誇る本が登場しました。それが、『死ぬまでに観たい映画1001本』。日本映画を三十本たらず(しかも無難な作品群)しか掲載していないのが、邦画ファンとしては少々物足りないのですが、とにかくヴォリュームのある本。まずは装釘が素敵で、表紙には『サイコ』(1960)のジャネット・リー(今年の十月に亡くなりました。ちなみにヒッチコックはもともと、この役にエヴァ・マリー・セイントの起用を希望していたそうです)。裏表紙には、『シャイニング』(1980)のジャック・ニコルソン。そして、背には『フランケンシュタイン』(1931)のボリス・カーロフ
内容について言うと、個々の解説は短いのですが、たいへん読み応えがあります。スチール写真も沢山あるし、1000頁ちかくもある大著なのに、なんと5500円(しかも後に述べるように、ジョルジュ・メリエスのDVDが附いてきます)。
ただし、斯界の著名人が書いているのにもかかわらず、日本映画についてはいいかげんな記述がちらほらと見えるのが残念です。たとえば、「(小津映画の―引用者)全作品中でカラーは『お早う』(ママ)と本作(『秋刀魚の味』―引用者)の2本しかない」(p.405)なんて、明らかな嘘なのですが、誰も誤りに気づかなかったのでしょうか。執筆者は、ジェフ・アンドリューさん(訳者は不明)。日本映画については、ドナルド・リチーさんのような大家に書かせろ、とは誰も言っていません。でも、基本的な事柄くらいはきちんと押さえておいてほしいものです。
それでも、やはり有難いのが、ジョルジュ・メリエスのDVD(全部で十三作品を収録しています)が附いてくるということ。私は、『月世界旅行』さえ観たことがなかったのですが、この附録のおかげで観ることがかないました。