しょんがいな、しょんがいな

寒。大学へは行かず。朝から夕方まで論文書き。夜はアルバイト。
夕方、行き詰まってしまったので、山中貞雄丹下左膳餘話 百萬兩の壺』(1935,日活)を観た。
「七十年前」の作品とはとても思えない、最高の「現代時代劇」だった。
丹下左膳餘話 百萬兩の壺 [DVD]
いかにもこれは「餘話」であって、伊藤大輔による人物造型を再現したものではない。大河内傳次郎は、コミカルな左膳を演じて小気味よい。二枚目の澤村國太郎長門裕之津川雅彦の父君)が演じる「三枚目・柳生源三郎」も素晴らしいし、喜代三(お藤)の小唄も耳に心地よい。
それから特筆すべきは、小道具(達磨、矢、招き猫など)の使い方が巧いことである。
特に長袴を用いた、ごく自然なトランジション*1には感動した。
残念ながら、やはりコマ落ちはあるけれど、ウェスタン・エレクトリックによる録音技術(さすがは日活!)は素晴らしい。ふたたび強調しておくが、これは「七十年前」の作品なのである。
山中貞雄監督は力業というより才気の人であった」、とは双葉十三郎氏の言。「日本のジャン・ヴィゴ」と言ったのは、四方田犬彦氏。
〈春〉が来たら、『人情紙風船』をもう一度観てみよう、と思った(『河内山宗俊』は未見)。

*1:左膳の動きに合わせたワイプも新鮮な感じがした。