川島雄三の遺作

晴。遅蒔きながら、『文藝春秋』(十月号)を買って来る。主に、阿川弘之「『お言葉』は終りましたが」(「葭の髄から・百十四」)と呉智英坂東眞砂子『子猫殺し』を論ず」を読むため。「お言葉」というのは、高島俊男先生の名物コラム「お言葉ですが…」のことで、阿川氏は「『週刊文春』の目次欄にぽつかり一つ大きな穴があいたやうな感じがする」と書いている。
朝、論文など。柏木如亭著 揖斐高校注『詩本草』(岩波文庫)少しよむ。これはおもしろい。そうだ、岩波文庫といえば、このイヴェントが楽しみなのだ。『岩波文庫の80年』は手に取ってみたい。
午後、川島雄三『イチかバチか』(1963,東宝)を観る。川島は本作品が公開される直前に亡くなっている。だからこれが遺作となった。原作は城山三郎の企業小説なのだけれど、若干コメディ風になっているのは菊島隆三や川島によって脚色されたからなのだろう(原作は読んでないけど)。伴淳や高島忠夫もいいけれど、ふてぶてしい大田原泰平=ハナ肇がいい。コメディアン色をいっさい排した、というとおかしいけれど、とにかく「真面目」なだけの山茶花究もいい。「イデ隊員」二瓶正也(正典)も気になった。二瓶は労働組合員(男性三人組のひとり)という設定なのだが、最後の最後に、体を張って島千蔵社長=伴淳三郎を守ろうとする。また対話シーンでは、ナナメ上からの俯瞰ショットが多い。これでもか、というくらいに多用されている*1
夜、獅子文六原作の『箱根山』を録画しそこねたことを後悔する。
昨日、丹波哲郎が肺炎のため亡くなったそうだ。ついに大霊界へ……。享年八十四。御冥福をお祈りします。

*1:同年に撮られた『喜劇 とんかつ一代』では、森繁久彌岡田眞澄の対話シーンくらいにしか使用されていなかったのだが。