本田はわしだよ

『社長洋行記』(1962,東宝

社長洋行記 正・続篇 [DVD]
監督は、杉江敏男。製作は、藤本眞澄。
「社長シリーズ」の第十三作です。シリーズ初の海外ロケ。印象的なのは、社長の森繁久彌(本田英之助)と秘書の小林桂樹(南明)が飲んでいる長回しのシーンです。このときは、なおも飲もうとする森繁を、小林がなだめています。
ところが、そこから場面は転じて、車内のシーンになります。すると、いつの間にか立場が逆転していて、「もう一軒行きましょうよ。社長、ぼかあいい店知っちゃってるんだからさー」とわめいている小林を、今度は森繁がなだめています。小林はへべれけになっていて、運転手に「おい本田」。すかさず、森繁が「本田はわしだよ」。
やがて二人は、歌をうたいはじめます。フランク永井(もともと二村定一が歌っていました)の、『君恋し』。「君ーこいしーくちびーるーあーせねどー」と歌う二人が可笑しい。
文字で書くと、全然おもしろくないのですが、実際に映像で観て、そのおもしろさを体感してほしい。
本作品では、この頃、邦画に出ずっぱりだった尤敏も柳秀敏として出演しており、彼女の存在感も忘れがたいものがあります。