2007-01-01から1年間の記事一覧

野口英世神話

◆いわゆる「野口英世神話」には、海野弘『二十世紀』(文藝春秋)*1 pp.98-103 が言及していて、中山茂『野口英世』(朝日新聞社)からの引用もある。ついでに言うと、「ロックフェラー財団が日本人野口をエクアドルに送ったのも、白人によるラテンアメリカ…

ルネ・クレール&サティの前衛映画

◆二十世紀初頭、セルゲイ・ディアギレフのバレエ・リュス(ロシアバレエ団)がパリの民衆を熱狂させたこと(特に1909年、またオペラ座で上演された翌10年)、そのバレエ・リュスに、マルセル・プルーストやココ・シャネル、ジャン・コクトーらが感化されたこ…

讀書百遍、意自ら見る

◆こないだ某所にて100円で拾った、安岡章太郎編『現代作家と文章』(三省堂新書,1969)をパラパラとやっていて、気になったのが、「読書百遍、意自ら通ず」という表現(p.144)である。これは、谷崎潤一郎の『文章読本』における表現を承けてのものなのだが…

OMMでの収穫など

◆横尾忠則の新刊、『悩みも迷いも若者の特技だと思えば気にすることないですよ。皆そうして大人になっていくわけだから。ぼくなんかも悩みと迷いの天才だったですよ。悩みも迷いもないところには進歩もないと思って好きな仕事なら何でもいい。見つけてやって…

「小説」の考案者?

◆OMMへ行って来た。購入した本については後日。 ◆四方田犬彦『先生とわたし』(新潮社)より、引用。メモ。 (吉田―引用者)賢輔はその後も著述に長け、『外篇』(『西洋旅案内外篇』のこと。1869年刊―引用者)に続いて『物理訓蒙』上中下巻(1871、73)や『…

『説文』「木」部贋作説

◆昨日すこしだけ触れた、『説文解字』について、関連することがらを書いておくことにしよう。まず、吉川幸次郎『人間詩話』(岩波新書,1957)には、次のようにある。 蔵書のうち最も得意なものを以て家に名づけることは、中国の蔵書家に、往往ある風習であ…

抽齋、霞亭…

◆先刻からずっと、『澁江抽齋』『北條霞亭』が鷗外の二大傑作であると書いていたのは誰だっけ、とおもい出せずにいたのだが、若しかすると……と石川淳『森鷗外』(岩波文庫)を披いてみたら、まさにそれだった。評論家による読書随筆みたようなもので読んだ記…

三島由紀夫と空飛ぶ円盤

◆唐沢俊一『新・UFO入門』(幻冬舎新書)の「盗作騒動」は、はじめ「正式の証明」(id:u-sen)で知り、それからあちこちで話題になっているのを見たのだが(「2ちゃんねる」、『週刊新潮』6月21日特大号pp.57-58など)、それはともかく、CBA(Cosmic Brothe…

onobori-san

◆ここの最後のところで、東京行きをホノめかしていましたが、じつは八日から十一日まで、東京に居たのであります。八日は神保町、九日は早稲田の古本屋街へ行くことが出来ました。ちょっとかつかつかな、古本屋廻りは存分に出来るだろうか、と心配していたの…

いずこへ。

◆出久根達郎『本の背中 本の顔』(河出文庫)に、「デコちゃんの著書で、『巴里ひとりある記』と『高峰秀子』(河出新書)の二冊が、もっとも探しにくく、古書価はどちらも三千円ほど、と(中山信如『古本屋「シネブック」漫歩』ワイズ出版に―引用者)書いて…

最近観た映画

◆三月から五月にかけて観た映画のメモ。 *印を附した作品は、再見あるいは三度以上観たことのあるもの。 穂積利昌『この世の花 第三部開花の巻』(1955) 佐藤肇『散歩する霊柩車』(1964) ピエール・グランブラ『銀幕のメモワール』(2001、仏) 穂積利昌…

堀辰雄の文庫

◆本日付の『朝日新聞(夕刊)』に、「小津映画 リズムに秘密」というタイトルの記事が載っている。それによると、東工大の佐藤大和氏が、小津安二郎の後期六作品をコンピュータによって分析したところ、場面ごとにその構成要素たるカットの長さを調整し、各…

がくくわい

◆KyUのKGか、KwUのKGか、あるいはS先生かでちょっと迷ったが、KyUのKGへ。『倉石武四郎講義 本邦における支那學の發達』(汲古書院)購入。二割引で、1600(+税)円。「倉石先生の最終講義」という宣伝を聞いた気がするが、「最終講義」ではな…

小股談義

◆「小股」談義というのがある。いや、これはいまかってに名づけてみたのだが*1、つまり、「小股の切れ上がった女」の「小股」とはそもそも何ぞや、それが「切れ上が」るとはいかなる義なりや、という議論のことである。淮陰生(中野好夫)の『一月一話 読書…

字謎

◆「平林」のことをあれこれ教えて頂いていて、ふと思い出したのが、「分解字」「字詰」「字割」、また文字や熟語のいわゆる「異分析」のことである。これが笑話に活かされることはよくある(安楽庵策伝『醒睡笑』にもその手のものが幾つかある)。 艶笑もの…

乱歩と『宝石』

◆ミステリー文学資料館編『江戸川乱歩と13の宝石』(光文社文庫)が、さいきん出た。その収録作品の顔ぶれ(日影丈吉『飾燈』、火野葦平『詫び証文』、宮野村子『手紙』、鷲尾三郎『銀の匙』、高城高『ラ・クカラチャ』、徳川夢声『あれこれ始末書 歌姫委託…

ふたたび恐妻家

◆もう二年前のことになるのだが、ここの前半部で、「恐妻家」について書いた。「恐妻家」ブーム(?)は、1930年代と1950年代とにおおきなヤマがあったと見ている(二年前とはかんがえが変わったわけです)。まず1930年代には、星野貞志(サトウハチロー)作…

即売会

◆みやこめっせの「春の古書大即売会」、最終日に、なんとか行くことが出来た。大槻文彦編『大言海』(冨山房)をついに購入。函欠だが、索引冊も合わせて全五冊(全て初版)、美本で3000円。たしか下鴨で、一冊百円のを見かけた記憶があるが、状態も悪く、バ…

富塚清

◆笹原宏之『国字の位相と展開』(三省堂)。これは前から欲しいと思っている本で、未だに買えずに居るのだが、三中信宏氏(某先生のお知り合いだそうです)が、こちらとこちらとこちらに、この目次よりも詳細なものを掲げてくださっていて、たいへんありがた…

四天王寺の古本市

◆上天気なので、「四天王寺 べんてんさん 大古本祭」へ行く。会場でOさんの姿をお見かけしたような気がしたのだが、やはり来られていたらしい。徳富蘇峰『読書法 読書九十年』(講談社学術文庫)350円、入江相政『余丁町停留所』(中公文庫)300円をまず買う…

水木作品文庫化ラッシュ

◆フジ系列で夜九時からかかっていた、「ベストハウス123」という番組。テレビ欄にある「恐怖妖怪」って一体何だろう、と思っていたのだが、「水木しげるの選ぶ恐ろしい妖怪」とか何とか、そういうコーナーのことだったらしい(しまった見逃した)。水木しげ…

頼まれてくれる

◆「頼まれてくれ(る)」という表現は、こちらに拠ると、泉鏡花の『歌行燈』に出て来るのだそうだ。糸井重里監修『オトナ語の謎。』に言及があることも覚えていなかった(新潮文庫版のp.169に、「かたちとしては質問だが、意味としては命令であるという、じ…

澄むと濁るのちがいにて

◆某先生が、我々にときおり話してくださる話柄に、「日本語は澄むと濁るで大違い」というのがある。ことば遊び関係の本を探しているときに、その例を幾つか見つけたので、以下にメモしておこう。 「なにしろ日本語というやつはデリケートでしてね、たとえば…

ぢいさんの話

◆いま借りて読んでいる「大人の本棚」の一冊、小山清『小さな町』(みすず書房,2006)所収の「をじさんの話」に、「そして私達が配達から帰つてくる頃には、ひと眠りして起きたぢいさんが、既に店の掃除をすましてゐるのである」(p.36)、とあった。この「…

タカラダニあらわる

◆いま気になっている本は、とても買えそうにないものばかりだ。まずは、今月中旬発売予定の『基本日本語活字見本集成 OpenType版』。「アイデア別冊」との由。それから、『週刊新潮』で広告を見たのだが、新潮社編『新潮日本語漢字辞典』(新潮社)。今年の…

辞書にない言葉

◆このあいだやっていた『探偵!ナイトスクープ』に、「物産飴売」の話題が出て来て、宮田章司さんが登場した。『江戸売り声百景』(岩波アクティブ新書)、買おう買おうとは思いながら、未だに購入していない…。 室町京之介『新版 香具師口上集』(創拓社,1…

ワゴンセール

◆阪急古書のまちワゴンセール。つい行ってしまう。富士正晴『書中のつき合い』(六興出版)210円、串田孫一『四季の歌 季節の随想』(大和書房)210円、桑原武夫『この人々』(文藝春秋新社)300円、玉上琢彌『源氏物語入門』(新潮社)300円、中村幸彦『近…

読書と或る人生

◆枕頭の書のうちの一冊は大体「本の本」、つまり「書物に関する書物」で、いま読んでいるのは福原麟太郎『読書と或る人生』(新潮選書,1967)なのだが、これはその評判どおり面白い。 福原氏ほどの読書人に、「私はどう思っても、読書家といううちには入ら…

気になるのはどうでもいいことばかり

◆岡崎武志『読書の腕前』(光文社新書)の pp.254-55 に、「(新潮文庫の―引用者)とくにクリーム地カバーの、グリーンの罫線が入ったシリーズはすごかった。日本の文芸評論の極めつきが、これでもかと打ち出されて、煮つめに煮つめたラインナップになってい…

ふたたび植村清二

◆植村鞆音『歴史の教師 植村清二』(中央公論新社)が、おもしろい。植村清二の松山高等学校時代の教え子には池島信平や奈良本辰也、村上信彦らがいて、新潟高等学校(現・新潟大学)の教え子には綱淵謙錠、利根川裕、中山公男、野坂昭如、丸谷才一らがいる…